すが 秀実『1968年』ちくま新書

1968年 (ちくま新書)

1968年 (ちくま新書)


先進国に同時多発的に起こった多様な社会運動は、日本社会を混乱の渦に巻き込んだ。その結果生まれたウーマン・リブ(→フェミニズム男女共同参画)、核家族化(=儒教道徳の残滓の一掃)、若者のモラトリアム化(→「自分さがし」という迷路)、地方の喪失(=郊外の出現)、市民の誕生と崩壊、「在日」との遭遇などの現象は相互に関連しながら、現代社会の大きな流れを形作っている。前史としての“60年安保”から、ベ平連全共闘運動を経て三島事件連合赤軍事件に終わるまでの“激しい時代”を、新たに発掘した事実を交えて描く現代史の試み。

最近テーマの一つの「新左翼」についての一冊(もうひとつは「アジア主義」)。安保闘争から学生紛争までの流れを整理し、その意義を問うものであった。68年をその後のポストモダンの時代の起点とし、一方で当時の新左翼の運動を単なる市民運動としてではなく、ソ連を中心とした国際関係の影響を示していて興味深い。この運動の「偽史」=サブカルチャー的側面に注目しているのも面白いが、吉本隆明あたりの論旨が分かりにくいのが残念。