興梠 一郎『中国激流―13億のゆくえ』岩波新書

中国激流―13億のゆくえ (岩波新書 新赤版 (959))

中国激流―13億のゆくえ (岩波新書 新赤版 (959))


輝かしい経済成長の一方で、官僚の腐敗や格差の拡大など社会問題が深刻化する中国。近年各地で農民や労働者の抗議行動が頻発している。「反日デモ」は何を背景にしていたのか? 揺れ動く巨大国家の深部に迫る最新レポート。

東アジア地域にて最大の影響力を誇る中国。その今を知るべく読んだ一冊。政府資料からインターネットまで豊富な現地の情報をもとに、中国における一党独裁に起因する問題、特に様々な格差とそれを正そうとする民主化の動きについてまとめている。中国の政治システムの問題点を浮き彫りにしており、読みながら興奮してしまいました。

文 京洙『韓国現代史』岩波新書

韓国現代史 (岩波新書)

韓国現代史 (岩波新書)


日本の植民地支配から解放されて六〇年。韓国の歩みは分断、戦争、独裁、軍事政権、民主化運動、そして経済破綻など日本では想像を絶するような波乱に満ちている。三〇年余りの歳月を隔てて起こった二つの悲劇―済州島四・三事件光州事件を軸に、ダイナミックに描きだす激動の現代史。

韓国の基本的な知識を勉強するために読んだ一冊。韓国史の最低限の知識を「市民」と「地域」をキーワードにコンパクトかつ平易にまとめた良書です。特に、今の関心からは韓国における「地域」の問題をそのアイデンティティや政治との関係で注目しているのは大変参考になりました。

すが 秀実『1968年』ちくま新書

1968年 (ちくま新書)

1968年 (ちくま新書)


先進国に同時多発的に起こった多様な社会運動は、日本社会を混乱の渦に巻き込んだ。その結果生まれたウーマン・リブ(→フェミニズム男女共同参画)、核家族化(=儒教道徳の残滓の一掃)、若者のモラトリアム化(→「自分さがし」という迷路)、地方の喪失(=郊外の出現)、市民の誕生と崩壊、「在日」との遭遇などの現象は相互に関連しながら、現代社会の大きな流れを形作っている。前史としての“60年安保”から、ベ平連全共闘運動を経て三島事件連合赤軍事件に終わるまでの“激しい時代”を、新たに発掘した事実を交えて描く現代史の試み。

最近テーマの一つの「新左翼」についての一冊(もうひとつは「アジア主義」)。安保闘争から学生紛争までの流れを整理し、その意義を問うものであった。68年をその後のポストモダンの時代の起点とし、一方で当時の新左翼の運動を単なる市民運動としてではなく、ソ連を中心とした国際関係の影響を示していて興味深い。この運動の「偽史」=サブカルチャー的側面に注目しているのも面白いが、吉本隆明あたりの論旨が分かりにくいのが残念。

小山 龍介『整理HACKS!―1分でスッキリする整理のコツと習慣』東洋経済新報社

整理HACKS!―1分でスッキリする整理のコツと習慣

整理HACKS!―1分でスッキリする整理のコツと習慣


何も考えずに放り込むだけ! それがライフハッカー式超整理術。無理なく楽しんで整理できる整理のアイデアを紹介するとともに、プロセスについて考える楽しさも伝える。

おなじみHACKシリーズの一冊。今回はまさにクラウド・コンピューターの利用の仕方とこれまでのエッセンスをぎゅっと詰めてみました、といいたところ。とりあえずこの一冊があればライフハックの基礎は学べるはずで、非常に参考になりました。ただ、そろそろ息切れなのか、以前と重なるハックが多かったのは残念。

市野川 容孝『社会 (思考のフロンティア)』岩波書店

社会 (思考のフロンティア)

社会 (思考のフロンティア)


今日の社会科学にとって重要な問いは、「社会とは何か」「それはいかにして可能か」という抽象的な問いではない。ある歴史性をもって誕生し、この問い自身が不可視にしてしまう「社会的」という概念を問題化することである。本書では、この概念の形成過程を辿り直し、福祉国家の現在を照射することから、「社会的なもの」の再編を試みる。

公共性という、最近の新自由主義的な世界を考える際に出てくる概念を考えるうちに出会った一冊。公共とは直接イコールでは結ばれないが、この本では福祉国家の参照系としての「社会的」という言葉に注目し、歴史・思想の双方向から現在の可能性について迫っている。主張は興味深かったが、専門用語や引用が何の前提も無しに出てくるので、いかんせん難しかった…。

森村 進『自由はどこまで可能か―リバタリアニズム入門』講談社現代新書

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)


自己所有権とは何か?「自由と国家」を問い直す注目の思想!
裁判は民営化できる、国債は廃止、課税は最小限に、婚姻制度には法は不要――国家の存在意義を問い直し、真に自由な社会を構想する

リバタリアニズムの概説書。現在のネオリベなどの自由主義の思想的内容・背景が知りたくて読みました。自由はどこまで可能か、ということで、本作では、自由経済市場経済の万能性がうたわれていました。しかし、逆に市場こそが個人の自由を奪っている現状を省みてやはり自由・市場の野放図な展開は問題あり、と思いました。

岡田 知弘『道州制で日本の未来はひらけるか―グローバル化時代の地域再生・地方自治』自治体研究社

道州制で日本の未来はひらけるか―グローバル化時代の地域再生・地方自治

道州制で日本の未来はひらけるか―グローバル化時代の地域再生・地方自治


構造改革」政策が地域格差と貧困をもたらした。それを打開し、持続可能な地域経済と地域社会をつくる道は、国民・住民の自治の創造力にある。道州制の導入は、その自治の力を奪うものだ。本書では、日本の地方自治運動の新たな地平に立ち、現今の道州制導入を中心にした地方制度改革の動向を批判的に検証しながら、現代日本の地域がかかえる危機的状況の解決方向を、地方自治及び地域再生の視点から述べている。

地域の問題を経済学から学んでみようとして読んだ本。内容は非常に濃いもので、現在の新自由主義路線による地域、なによりそこに住む人々の疲弊の状況を描いている。さらにはその中から住民自身の運動の立ち上がりを論じている。やや小泉改革および経団連会長への押し付けが強いものの、現状を把握するには良い本です。