大塚 英志 「とは何か」ちくま新書

<伝統>とは何か (ちくま新書)

<伝統>とは何か (ちくま新書)


「伝統」が、その担い手たちによって「作られる」ものであるという議論は、現代思想文化人類学の領域ではそう珍しいことではない。けれども「伝統」の消費者たちにとっては、それにつきまとっているまやかしや杜撰さはあまり問題にならない。その事情は、明治維新によって急激な変化を強いられた近代日本でも同様だった。「伝統」が「求められ」、「作られて」いくプロセスを具体的に検証し、「伝統」を「求めて」しまう理由について考える。

以前たまたま買っていて、柳田の地域概念について調べる際に再読しました。「伝統」と呼ばれる物が作られていく過程を「妖怪」や「ムー大陸」といった一際変わったものをテーマに、民俗学創成期に分け入って論じた本。やや結論先にありきな論証ですが、柳田民俗学の持つ(持っていた)多様な可能性を模索しようとしています。